ヨネックス株式会社は、「独創の技術と最高の製品で世界に貢献する」というパーパスを掲げ、グローバル成長戦略を推進する世界的なスポーツ用品メーカーです。カーボン技術を軸とした「ものづくりの進化」と、それを支える「人財育成」を重視し、近年は全社的なAI活用プロジェクトを立ち上げ、業務効率化を加速させています。「世界共通の品質」を保つためにTeachme Bizをどのように活用し、技術伝承と業務の属人化解消に取り組んでいるのかを伺いました。
お話を伺った方々
村越 弘章様 研究開発室 先端技術研究課長
江渡 謙太様 総務部 経理課 システム班 係長
二宮 慎様 生産管理部 製造設備課 主任
阿部 優葵様 シャトル製造部 水鳥製造課 主任
永田 将斗様 技術開発部 テニス開発課
作業の属人化と、紙マニュアルでは伝わらない「動き」と「コツ」
―――まず、御社の事業や最近の取り組みについて教えてください。
村越様(以下、敬称略) 当社は、バドミントン・テニスなどのスポーツ用具の製造・販売、そしてゴルフ場の運営を行っています。中長期ビジョンの中ではグローバル成長戦略を打ち出しており、インド工場や台湾工場など海外拠点と連携し、世界中どこでも同じ品質のものづくりができるよう強化しています。最近の取り組みとしては、AIなどの新しい技術を積極的に取り入れることに全社で力を入れています。社内でAIプロジェクトを立ち上げて、情報収集やアイデア出し、開発など、様々な業務でAIを活用して効率化を図っています。

研究開発室 先端技術研究課長 村越 弘章様(Teachme Biz導入担当者)
―――Teachme Biz導入以前、どのような課題を抱えていたのでしょうか?
村越 大きな課題は、特定の作業が特定の人しかできない「属人化」の状態が生まれてしまっていたことです。例えば研究開発部門では、試験機器や評価装置など専門性の高い装置があり、機械1台に対して1人が担当しているケースもあります。そのため、担当者が離職などで抜けてしまうと、業務が滞ったり、機械メーカーに一から聞かないと使い方がわからない状態になるというリスクがありました。工場内でのジョブローテーション(部署間の人材交流)もなかなかできず、多能工化を推進する上での障壁となっていました。また、昨今の人手不足やベテランの退職がある中で、新人の定着率の安定化や退職時の引き継ぎも課題でした。
二宮様(以下、敬称略) 設備の設計では、同じ目的の装置でも設計に個人ごとのクセが出てしまうときがあるので、抑えるべきポイントなどの標準化を取り組みたいと思っています。また初めての作業や普段しない業務を担当する際に、本来の方法とは違う方法で作業をしてしまう懸念があり、いかに多能工化を進めるかに課題を感じていました。
阿部様(以下、敬称略) 私が所属するシャトル製造部では、数ミリ、コンマ何ミリといった非常に細かい規格・基準を守る必要があります。しかし静止画や文字のみの紙マニュアルでは手の動かし方や力加減といった動作を伝えるには限界がありました。その結果、長い時間をかけて教育をし、一人前になるのに数年かかってしまう状態でした。

シャトル製造部 水鳥製造課 主任 阿部 優葵様(Teachme Biz活用推進・マニュアル作成を担当)
永田様(以下、敬称略) 技術開発部テニス開発課では、ストリングの新製品の開発や新色の開発に携わっていますが、紙マニュアルではベテランの経験や機械を動かす際の微妙な「感覚(ひねり)」のニュアンスが表現できず、伝わっていない部分が多いと感じていました。ボタンを押すだけなら写真でもわかりますが、機械の操作や測定といった作業は静止画では分かりづらいため、結局は先輩に聞きながら一緒に作業するというケースが多かったのです。

技術開発部 テニス開発課 永田 将斗様(Teachme Biz活用推進・マニュアル作成を担当)
現場で使いやすいシンプルな操作性と高度なセキュリティが決め手
―――数あるマニュアルツールの中で、Teachme Bizを選んだ理由を教えてください。
村越 熟練者の細かい動作やニュアンスを伝えるには、写真や画像、テキストだけでは限界があると感じ、動画マニュアルに着目しました。動画マニュアルツールをいくつか試し、その中でTeachme Bizを選定した一番の決め手は、シンプルな操作で使いやすいことです。また、AI機能であるTeachme AIは、作業動画をアップロードするだけで自動的に分割されるので、簡単な操作でマニュアル作成の手間を大幅に減らせることが決め手となりました。そもそも動画でマニュアルを見るという文化がなかった中で、作業を動画で見られるという点が社内で非常に好評でした。

作業動画をアップロードするだけで手順ごとに自動で分割
江渡様(以下、敬称略) Teachme BizはPCだけでなく、タブレットやスマホなど、様々なデバイスから閲覧できるフレキシブルな対応ができる点も魅力です。製造現場ではPCが常に使える環境とは限らないため、各ラインに配置したタブレットで、作業中でもすぐにマニュアルを確認できる環境を整えられることが重要でした。
また、システム選定にあたり、セキュリティ面も重視しました。今回はAIが使用されるサービスだったので、外部に情報が学習利用されないかという懸念もありましたが、Teachme Bizは問題ありませんでした。さらに、グローバルIPで制限をかけることができるため、セキュリティを担保しつつ閲覧権限を設定でき、製品の機密情報の漏えいといった懸念を考える必要がなくなったことも評価しています。

総務部 経理課 システム班 係長 江渡 謙太様(システム選定・管理を担当)
AIでマニュアル作成時間が3分の1に短縮。技術やノウハウを可視化し確実に継承
―――Teachme Bizで、どのようなマニュアルを作成していますか?
村越 主に製造設備の操作や保全のマニュアル、開発研究部門での試験機器の操作や、実験の作業手順のマニュアルなどを作成しています。
永田 例えば、テニスラケットのガットを張る作業のマニュアルを作成しています。これは新入社員が必ず覚える作業なのですが、以前は誰かが付きっきりで教えていたところを、今はマニュアルを見れば一通りできるようになっています。また、製造設備の作業では、動画になったことで経験者と初心者で違いが出やすい「ひねる」といった感覚的な動作が視覚的に伝わるようになりました。

細かい作業も、動画で確認しながら進めることが可能に
―――現場の方々からの反応はいかがでしたか。
阿部 ベテランの方々にマニュアルを見せると「もっとこうした方がいいよ」とアドバイスをたくさんもらえます。そのフィードバックを反映することで内容の質をさらに上げられる機会になりました。また、作業に関する会話をきっかけに新たなマニュアルを作ることも多々あります。
―――導入の効果はどのようにお感じでしょうか。
村越 導入コストに対する効果を試算した上で、年間80件作成という目標を掲げ、積極的に動画マニュアルへの移行を進めています。ITツールに不慣れな人でも簡単に使えるので、特に製造部門での活用が最も進んでいます。実際に運用してみると想定以上にマニュアルが作成され、業務効率化が進んだため、費用対効果は十分に見合うものになっていると感じています。
二宮 作成に対するハードルが紙マニュアルよりも下がっているのかなと思います。やはり現場の皆さんは日々の業務の方が優先度が高くなってしまって、マニュアル作成が後手に回ってしまう傾向がありました。Teachme Bizなら短時間で作成できるので、その成功体験が広がって元々立てていた目標の作成件数を上回るようなスピードで作られています。
阿部 以前は同じボリュームのマニュアルを紙で作る場合、1件あたり平均6時間程度かかっていました。シャトル製造では細かい規格を文章化する必要があるため時間がかかっていたのですが、Teachme AIであれば、動画を撮るだけなので、1件あたりの作成時間が平均2時間程度になりました。従来の紙マニュアル作成と比べて大幅な時間短縮を実現しています。

両手で作業する場合は、アクションカメラで撮影
阿部 以前は知りたい情報を探す際、大量の紙マニュアルの中から該当の工程を探す必要がありましたが、Teachme Bizであれば一発で検索できるので非常に便利です。現場ではタグ機能を重宝しています。シャトル製造部の中でも様々な機械があり、それぞれのマニュアルに「起動の方法」「停止方法」など内容ごとにタグ付けで分けられるので、検索を細かくできます。
永田 新人が自分で簡単に調べられるのも便利だと思います。仕事が忙しそうで質問できないときもあるので、自分で調べられて解決できるのは、学習面での時間短縮になっていると思います。
教育ツールとして体系化し、世界共通の品質基盤を構築
―――今後、Teachme Bizをどのように発展させていく予定ですか?
二宮 今後は、異なる人が設計することで生じる個人ごとの「色」を抑えるための標準化や初めての作業でもできるようにマニュアル活用を通じて、多能工化しやすい環境を整えていきたいです。
村越 今はマニュアルを作ることに注力していますが、今後はこれを発展させて、社内教育ツールとして体系化し、新人や中途採用者の習熟度の指標として活用していく予定です。新人が入った際に、最初に見るべきマニュアルをカテゴライズしておけば、なんとなくでも感覚を掴んでから実際の作業に入れるようになります。このように教育体制が整うことで、新人も安心して働ける環境づくりにつながると考えています。属人化していた作業を全てマニュアル化していけば、ジョブローテーションも可能になるでしょう。
江渡 将来的には、全社展開できればと考えており、個別にアカウントを割り当てることで、誰がどこまで動画を見たかを可視化できると考えています。管理者側が作業の進捗を把握しやすくなり、多能工化を前提とした人材育成の管理が容易になると期待しています。
村越 今後は、東京工場だけでなく、他の国内工場やインド工場、台湾工場などの海外拠点にも展開して、さらなる技術伝承の仕組み化を図っていき、世界共通の品質を担保するための基盤として活用を進めていく予定です。

Teachme Bizのおすすめポイント
―――最後に、同様の課題を抱える企業にTeachme Bizをおすすめするポイントをお願いします。
村越 技術伝承のためのマニュアル作成は重要ですが、従来の方法では時間がかかりすぎて後回しになりがちです。Teachme Bizのおすすめポイントは、やはり使いやすさが一番だと思っています。AIを活用すれば動画撮影からマニュアル作成までの時間を大幅に短縮でき、ITリテラシーに関わらず誰でも簡単に作成できます。
※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2025年10月当時のものです。
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