【セミナーレポート】営業・BO・経営の部門別 生成AI活用術
目次
営業・BO・経営の部門別 生成AI活用術
弊社スタディストが開催したオンラインセミナー「生成AI活用で1日1時間の業務削減を目指す 営業・BO・経営の部門別生成AI活用術」にて、株式会社Workstyle Evolutionの代表取締役CEO・池田朋弘さんに講演いただきました。
本記事では、池田さんの講演内容をサマリーとしてお届けします。生成AIを活用して業務効率化を図りたい方はぜひご参考にしてください。

<登壇者> 株式会社Workstyle Evolution代表取締役 池田 朋弘
1984年生まれ。早稲田大学卒業。2013年に独立後、連続起業家として、計8社を創業、4回のM&A(Exit)を経験。
起業経験と最新の生成AIに関する知識を強みに、ChatGPTなどのビジネス業務への導入支援、プロダクト開発、研修・ワークショップなどを数十社以上に実施。
著書に『ChatGPT最強の仕事術』は発売4ヶ月で3万部を突破。
YouTubeチャンネル「リモートワーク研究所」では、ChatGPTや最新AIツーの活用法を独自のビジネス視点から解説し、チャンネル登録数は10万人超(2024年7月時点)。
生成AIでの業務効率アップの現状
株式会社スタディスト 木本俊光(以下、木本): 池田朋弘さんには2024年8月にも生成AI活用術に関するセミナーをお願いし、大好評を得ました。今回、前回カバーできなかった部門別の生成AI活用事例を解説していただくほか、弊社が手がけるTeachme AIに関しても、池田さんの視点からコメントをいただきます。
前回のセミナーレポートはこちら
『ChatGPT最強の仕事術』著者 池田朋弘氏登壇! 生成AIで実現する業務効率化
株式会社Workstyle Evolution代表取締役 池田朋弘(以下、池田):生成AIによる業務効率化については、1日1時間程度、週に少なくとも5時間程度の削減効果があるとされています。これはグローバルで生成AIを業務に使っている方々の過半数の結果です。

国内の事例では、恐らく最も活用しているGMOさんの場合、1日約80分削減しています。これらを参考に、生成AIを社内展開するときには、1日1時間の節約を目標値に設定するとよいでしょう。
生成AIの効果

池田:ChatGPTなどの生成AI導入による業務の成果は、大きく3つあります。1)ルーティンワークの効率化、2)クリエイティブワークの効率化、3)ニューワークへのチャレンジです。
ルーティンワークの効率化
池田:ルーティンワークというのは、同じ手順でほぼ同じアウトプットを作る定型的な業務です。たとえばBO(バックオフィス)では、ミスが許されないさまざまな仕事がありますが、AIを活用して効率化が図れます。
クリエイティブワークの効率化
池田:クリエイティブワークとは、手順があってもアウトプットの答えがない業務です。今回のセミナーを例に挙げると、企画があって日程が決まり、開催する時間の枠はありますが、参加される皆さんにとって、有益で面白いと思ってもらえるように模索する取り組みであるため、どのような内容を伝えてどのような資料を使うかには答えがありません。
このように、アイデアを出して磨きをかけていくタイプの仕事に関しても、生成AIなら限られた時間の中でさまざまなアイデアを出せ、多様な可能性を模索できます。
ニューワークへのチャレンジ
池田:AIを活用していない場合、ルーティンワークに時間を取られてしまい、クリエイティブな仕事に時間を割けず、クオリティも上げられない状況に陥るケースが多いです。生成AIでルーティンワークを圧縮することで、クリエイティブワークの成果が上がるだけでなく、これまでできなかった新しい仕事にチャレンジできます。それにより、さらに成果を上げられます。

よくある生成AIの活用パターンとしては、企画立案、リサーチ、文章作成、プログラミング、他言語への対応などです。これらを部門ごとに、どのような活用パターンがあるのか紹介します。
BO(バックオフィス)での生成AI活用
池田:BOにとっての生成AIは、Excelのマクロも書けてデータ分析もできる「有能なアシスタント」です。BOの仕事はある程度定型化されており、正確に大量にこなすことが求められますが、それらのルーティンワークをミスなく実施するのに活用できます。

(1)お問い合わせ内容の整理
生成AIにメールやチャットに蓄積されているお問い合わせ内容を入れて、その内容からQ&Aを作るように頼むと、即座にQ&A形式に変えてくれます。
生成AIは不適切な情報を基にすると誤った回答することもありますが、この場合、自社が保有する正確なデータを再利用しているだけなので安心です。このように、生成AIを活用することで、社内データを「活用できる形」に変換することが可能です。
(2)データのフォーマット変換
お問い合わせ担当が電話やメールでやり取りした後、それをデータベースに登録する業務があります。従来は、人間が情報を整理してフォーマットに入力しなければならず、手間がかかりました。この業務も、事前にフォーマットを指定して元データを入れるだけで、すぐにフォーマットに従った形式に整理できます。
情報をピックアップし、フォーマットを変えるのは生成AIの基本機能です。生成AIというと、どうしても新しいものを作っていくという方向に考えがちですが、元データを変換する、こういった機能を理解するとさまざまなシーンで応用が利きます。
(3)データ入力・転記の自動化
BOの業務ではExcelやスプレッドシートなど表計算ソフトを使った作業もありますが、自分でマクロやプログラムを作って自動化するのは、多くの人にとってハードルが高く、エンジニアに頼むほどでもないスモールタスクである場合がほとんどです。
しかし、生成AIを使えば、ルールに基づいたマクロやプログラムを簡単に自動生成できます。内容さえ決まっていれば、数十秒で完了し、効率的に業務を進められます。
一方、ChatGPTでマクロやコードを作成しても、実際にどのように実行するのか分からない方も多いかもしれません。そのため、最低限の基礎知識として、1冊の体系的な本を読むことをおすすめします。コードの貼り付け場所や、エラーが出た際の対処法などを把握しておくことで、活用のハードルがぐっと下がります。
(4)定量データの分析
ChatGPTを例にすると、Excelファイルをアップすると中身を確認し、チャットで相談しながら分析できます。何を分析すべきか、どのような分析をしたら意味があるのか、そのためにはどうすればいいのかまで相談が可能です。
データの分析は、これまでは詳しい人に相談するか、自分ができる範囲内で行うしかありませんでした。今は生成AIを使うことにより、非常に効率的なデータ分析が可能になっています。
このように、問い合わせ内容などのデータ整理、ルーティンワークの自動化、定量データの分析など、BOにおける多様なシーンで活用できます。
たとえば信託銀行におけるBO業務であれば、書類の仕分けや、誤記や漏れのチェックに。IT機器販売であれば、障害対応の1次切り分け、システム監視のアラート文章があった場合の解釈、システム構築による業務プロセス改善などへの活用が考えられます。
営業での生成AI活用

池田:営業において生成AIは、「いつでも横にいる頼れる先輩」のように、営業の準備、商談、提案のクオリティアップをサポートしてくれる存在です。
営業では、枠はあるものの答えは決まっておらず、中身は自分で考えなければならない業務が多いですが、メールの文章や提案書など、完全な正解はない仕事を、生成AIを使って効率化できます。
「Dify」という、生成AIで自分専用のアプリを簡単に作れるツールを活用すると、単にチャット形式でやり取りするだけではなくて、ワークフローのような書類を作れます。
(1)商談獲得のカスタマイズメール作成
とある会社のCRMからデータをコピーして、そのデータをDifyに入力すると、ネットで検索して企業の事業内容を整理してくれます。その上で、メールの文章を作り、さらに誰が送る主体かによってメールの文面を変えられます。

インターネットで企業情報を調べて事業内容を把握し、そこに合わせてカスタマイズしたメール文案を作ってくれます。また、メール送信者の立場や役割を理解した上でメール文章を構成する、といった作業も簡単にこなせます。
文章の内容もカスタマイズ可能で、相手のコメントを引用したものであったり、関心がある内容に触れたりなども可能です。自分でこれら全てを作るとなると時間がかかりますが、生成AIを使うことで素案を簡単に作れます。
(2)商談前の顧客情報収集&提案仮説の整理
ほかにも「Perplexity」というツールがあり、こちらはインターネットの検索結果を自動で集め、まとめることに特化したAIツールです。
Perplexityを使うと、相手の会社や事業内容を瞬時に整理できます。これをChatGPTに入力し、自分の事業における提案内容を考えてもらいます。そこで出てきた可能性に関して、再びネット検索して事例を集めてくる、というように併用する方法があります。
ネット検索情報が追加できるのは非常に重要で、ChatGPTだと誤った情報が含まれる可能性がありますが、このツールではそのリスクを低減できます。根拠のページが書かれているので、確認作業も容易です。
(3)提案書のチェック
営業において特に押さえたいのは、チェックツールとしての活用法です。提案内容や商談などを録音したデータを文字起こしし、チェックすべき観点を明確に設定した上で、生成AIをチェックツールとして使います。そうすると、非常に効果的に、リアルタイムでフィードバックを得られます。

従来は、先輩や上司に相談するしかなく、相手が忙しくてリアルタイムで回答を得られないこともありました。しかし、AIを活用すれば、自分が助言を欲しいタイミングでいつでもフィードバックを受け取れます。
経営での生成AI活用
池田:経営における生成AIの役割は「24時間365日相談できるコンサルやメンター」です。リスクの洗い出しや新事業の検討、社内制度に関する相談を行えます。

さまざまな経営者が活用していて、有名なのはソフトバンクグループの孫代表取締役です。ディベートの相手としてChatGPTを利用し、リスクの洗い出しを行うほか、指摘されたことを論破することで、自分の主張や考えを確立する形で活用しています。
(1)意思決定にむけたリスク洗い出し
ChatGPTに事業プランを入れて、どのようなリスクがあるか、それに対する対策も考えるよう頼みます。これを人に頼む場合、かなり優秀なコンサルタントに依頼しないと、適切なアドバイスが得られない可能性があります。
生成AIを使えば、入力した情報に基づいて高精度のアドバイスを得られ、自分のペースでリスクの洗い出しなどを進めることができるため、議論相手として非常に優れています。
また、洗い出したリスクに対して「ほかには?」と尋ねると、さらにアイデアが出てくるので、自分のアイデア、事業プラン、企画などの壁打ちを効率的に行えます。
(2)新事業・新サービスの検討
新事業や新サービスに関しても同様です。企画のアイデアを出し、それをプラン化してリスクを出す、といったステップが必要ですが、生成AIを使うことで非常に効率的に進められます。
ChatGPTなどは法人で契約していれば、機密情報や自分の情報を学習させない設定にできます。そこで、他の人には聞きづらい内容をChatGPTに相談してアドバイスをもらうという、メンター的な使い方をしている方もいます。コーチングを提供している会社も、うまくAIを利用して戦略に活かしているケースがあります。
経営者は日々新しいことに挑戦していますが、AIを活用することで多角的な視点を得ることができ、それにより経営判断の精度を高めることが可能です。市場調査や競合分析、研究開発といった幅広い情報を扱う際に、AIを使ってプランを作成したりリスクを洗い出したりすることで、効率的かつ効果的に経営を進められます。
Teachme AIの魅力/可能性
池田:ここまでの内容を踏まえ、生成AIでマニュアル作成ができる「Teachme AI」について、特に魅力的だと感じた3つの点を紹介します。

生成AIとの抜群の相性
池田:Teachme AIを使うことで、テキストのマニュアルを作るドラフトを作れる、または作ったものをチェックできます。
マニュアルを動画で制作する場合は、シーンを分割した上で字幕を生成し、1個1個のステップの概要を作ってくれます。大幅な作業時間削減が見込める上、内容の要約も元データを使うためミスが起こりにくく、非常に成果が出やすい活用方法です。
木本:スキルがなくてもマニュアルが作れ、見る人にも分かりやすく届くようにする、といったことを心がけています。すでに参考のプロンプトが入っていて、後は人間が修正するだけでよい、といった便利さを意識しています。
人と生成AIの役割分担

池田:これまで人間が手作業で行っていた部分にAIが加わることで、文章のドラフト作成や校正をAIが担い、人間は内容の作成や最終チェックを行う、という業務フローが提唱されています。
生成AIには精度が100%でないという課題がありますが、Teachme AIは人間が関わる設計になっているため、精度が完璧でなくても実業務で活用できる仕組みとなっています。
木本:直近2ヶ月では、Teachmeの契約者の6割以上がAI機能を導入しています。理由としては、マニュアルの業務標準化・効率化を早急に進めたい、ベテランの知見を残したい、海外スタッフの育成を加速させたいという切実なニーズが挙げられます。また、マニュアル作成者と新人スタッフ、双方の負担を軽減したいという思いも強く感じられました。
業務プロセスとの統合
池田:3つ目は、AIをただ点で使っているだけではなく、業務のプロセスとうまく統合する形でAIが位置づけられていることです。
たとえば、ChatGPTでも文章作成や内容の要約といった一部の業務は可能ですが、マニュアル作成や動画の分割などは難易度が高いです。特に、作成したマニュアルを社内に展開し、業務オペレーションの効率化や成果の向上を図る段階になると、さらに困難が生じます。
Teachme AIは、情報を正確に伝え、後から検索しやすく見やすい形にし、それらが実際に活用されているか検証するプロセス全体がツールとして提供されている点がメリットです。
質疑応答
Q. 生成AIの回答に間違いがあった場合、それに気づくためにはどうすればよいでしょうか?
池田:現段階では、生成AIの回答は間違っているという前提で、人力できちんと確認するスタンスが必要です。
現在、ハルシネーション(もっともらしい嘘)と呼ばれるエラーがあるかをチェックする仕組みを開発中で、将来的には真偽が怪しい箇所があればアラートが上がるようになるでしょう。しかし現時点では、具体的なファクト、データなどは怪しい可能性があると考えて、検索し直さなければなりません。
PerplexityやGeminiのように、検索エンジン+生成AIのサービスであれば、根拠のページに移動できるので、ChatGPTだけではなく、これらを併用することで気づきやすくなります。
Q.生成AIの使用が禁止されています。安全性はどのように伝えたらよいでしょう?
池田:主な安全性リスクは、機密情報や個人情報の流出、作ったアウトプットを間違った状態のまま使用することなどです。
そのため、機密情報と個人情報は使わない前提で導入し、作ったアウトプットはそのまま使用せず自分でチェックする、といった取り決めを作るとよいでしょう。また、すぐに全社で適切に運用するのは難しいので、数人程度の小規模な段階から始めていく、と会社側に説明するとスムーズに進みやすくなります。
禁止されているのは、ポジティブ面の価値よりもマイナス面が大きいと見なされているためなので、小規模でもポジティブ面の事例や実績を出した上で、広げていくことをおすすめします。
Q.秘書業務におけるマニュアル、記録など、膨大なデータを整理整頓したいと考えています。ChatGPTもしくはTeachme AIを使って、既存の情報をどのように整理できるでしょうか?
池田:生成AIをうまく活用すると、録音した会議の文字起こしなど、非構造化データを構造化して整理できます。
たとえば、会議や研修などの音声データから特定の情報だけをピックアップし、スプレッドシートのセルに入れ、さらにタグ付けといった分類をするなどです。これまで人間が担うしかなかった作業も、生成AIによりある程度高水準で実行できます。
どのように情報を整理したいか考え、それに適した形にデータを変換する仕組みを作ると、膨大なデータを意味のある社内知見に変えていけます。
木本:Teachme AIでは、学習した内容を3000字程度入力すると、自動的にステップごとに分けられて見やすく整理されます。マニュアル用途ではない少し変わった使い方かもしれませんが、個人的にはとても便利だと感じました。
まとめ
生成AIは活用方法のコツを押さえることで、自社や自部門に適した使い方ができるようになります。生成AIをうまく利用し、業務効率化を実現させるとともに、さらに質の高い仕事をするのにお役立てください。



