AI導入はどう進める?日本企業の状況や導入メリット、進め方などを解説

最終更新日: 2025.12.02 公開日: 2024.03.07

AIを導入するメリット・デメリットとは? 日本の導入状況や導入手順を解説

近年、生成AIの普及が急速に進み、多くの企業が業務への活用を検討しています。しかし、AI導入を進めるためには、費用やリスク、社内体制といった不安要素を事前に把握し、目的に沿った活用方法を丁寧に設計することが欠かせません。

この記事では、日本企業におけるAI活用の最新動向を踏まえつつ、導入によって得られるメリット、注意点、導入費用や利用できる補助金制度、そして成功させるためのプロセスを整理して解説します。

日本企業におけるAIの導入状況

総務省が公表した「令和6年通信利用動向調査」によると、2024年8月末において従業者数100人以上の企業で、IoTやAIなどのシステム・サービスを導入している割合は18.4%となり、前年から緩やかに増加しました。一方で導入予定と回答した企業は11.3%にとどまり、依然として多くの企業が活用に踏み切れていない状況が明らかになっています。

産業別に見ると金融・保険業が44.2%と最も高く、次いで情報通信業が30.6%、製造業が26.1%と続き、サービス業では11.2%と低い水準にとどまりました。

AI研究開発の国際的な位置づけを見ると、日本は必ずしも上位とは言えません。スタンフォード大学の「AI Index Report 2025」では、AIモデル開発における主要国としてアメリカ、中国、ドイツ、香港、カナダが上位を占め、日本はトップ10に入っていません(2021~2023年)。同レポートでは、著名なAIモデルの多くがアメリカや中国の企業によって開発されていることが示されています。

総務省の情報通信白書(令和7年版)によると、2024年に新たに資金調達を受けたAI関連企業数において、日本は世界9位でした。1位のアメリカは1,073社で、2位のイギリス116社や、9位の日本42社など他の国々を大きく引き離しています。

こうした状況から、日本企業におけるAI導入や研究開発は着実に進んでいるものの、アメリカをはじめとする主要国と比べると依然として差があることが読み取れます。

参照元:総務省|令和6年通信利用動向調査の結果(IoTやAI等のシステム・サービスの導入状況)(37ページ)

参照元:スタンフォード大学|AI Index Report 2025(第1章研究開発)

参照元:総務省|情報通信白書令和7年版(新たに資金調達を受けたAI企業数)

AIを業務に導入するメリット

企業がAIを活用すると、業務の課題解決や生産性の向上など多様な効果が期待でき、職場の安全確保や売上向上にも寄与する可能性があります。

ここからは、AI導入のメリットを4つ紹介します。

業務における課題解決につながる

AIの導入は、業務の自動化・省人化を可能にし、業務効率の大幅な改善を実現します。例えば、データ入力や顧客対応、注文処理などの定型的なタスクをAIが担うことで、従業員はより創造的な業務に専念できるようになります。

さらにAIの導入によって、労働力不足を解消できるだけでなく、人件費・燃料費・保守費など、さまざまなコストを削減することも可能で、業務上の課題解決につながります。

人的ミスを防いで生産性を向上できる

AIの導入は、業務上の人的なミスや事故の発生リスクを低減させるためにも有効です。

AIで自動化すれば、個人のスキルや経験の差は関係なくなり、均一かつ高い品質で業務が遂行されるようになります。例えば、製造業の品質管理や金融業界の取引処理など、属人性が強いと考えられがちな業務や厳密さが求められる業務であっても、すばやく正確に作業が行われるため、生産性の向上を期待できます。

職場の安全性を高められる

AIを活用すれば、職場の安全性を向上させることも可能です。例えば、高所や有害な化学物質を扱う場所など、人間にとって危険な環境での作業をAI搭載のロボットなどが担うことで、労働者の安全を確保できます。製造業では、IoTとAIとを連携させ、生産設備の異常を検知し、大きな事故やトラブルへと発展する前に対処する取り組みも進んでいます。

さらに、ITシステムの監視や施設の入退室管理などにも活用でき、サイバーセキュリティや防犯の面でもAIの導入は効果的です。

売上や顧客満足度の向上につながる

AIを導入して業務の自動化・省人化が進めば、売上の向上に直結するコア業務に人的リソースを集中投下できるようになります。

さらに、ビッグデータを活用したマーケティングにおいても、精度の高い顧客データ分析や需要予測などで、AIは力を発揮します。最近ではチャットボットにAIを組み込んで、カスタマーサポートを強化する動きも顕著です。AIチャットボットで顧客対応を自動化し、24時間365日の対応を可能にすることで、顧客満足度の向上が期待できます。

AIを業務に導入する際の注意点

AIを活用する際には、導入効果だけでなく運用面で注意すべき点も把握しておく必要があります。ここからは、企業が直面しやすいポイントを整理して解説します。

責任の所在がはっきりしにくい

万が一、AI搭載のシステムやロボットがエラーや事故を起こした場合、製造者に責任があるのか、所有者に責任があるのかの特定は難しいと言わざるを得ません。

例えば、AI搭載の自動運転車が交通事故を起こした場合、事故を起こした責任を問われるのは自動車のオーナーなのか、自動車やAIの製造元企業なのかは、現時点では法的にも線引きは曖昧です。業務にAIを導入する場合、業務上の事故やトラブルに対して、誰がどのような責任を負う可能性があるのかを十分に理解したうえで、しっかりとした対策を取る必要があります。

リスク管理対策の必要性が高まる

AIシステムを有効活用するためには、膨大なデータを用意して、処理・分析させる必要があり、企業は従来以上に多くのデータをネットワーク上で扱うことになります。当然のことながら、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクも高まります。万が一、サイバー攻撃に遭い、顧客の個人情報などが漏洩してしまえば、企業としての信用は低下し、多額の補償を迫られるかもしれません。企業としてリスク管理対策を強化することは望ましいことですが、システムや設備の強化、従業員の教育などにはコストがかかります。

さらにAIシステムのトラブルによって、顧客に十分なサービスを提供できなくなるかもしれません。障害発生時の対応計画は事前に策定し、システムのバックアップや代替手段を準備しておくことも重要です。

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対策するべき「AIセキュリティ」とは?リスクの種類と具体的な対応策を解説

導入・ランニングコストがかかる

AIを導入する際には、初期投資だけでなく運用段階でも継続的なコストが発生します。データ収集やモデル精度を維持するための改善作業にはコストが伴うため、費用対効果を検討して導入を判断することが求められます。さらに、高度なシステムを使いこなすためには専門知識をもつ人材の確保や外部委託が避けられず、人件費や委託費が増える傾向があります。

以下では、具体的な導入費の相場を踏まえ、どの程度の予算が必要となるのかを解説します。

AI導入にかかる費用相場

AIを導入する際に必要となるコストは、システムの種類や導入規模、求める性能によって大きく異なります。比較的導入しやすいチャットボットは数十万円から数百万円で利用できる場合がある一方、製造現場で異常検知を行う高度なAIは1,000万円を超える例もあり、プロセスごとにコンサルティング費用や検証費が別途発生します。

さらに、導入後も継続的な改善やモデル運用に伴う費用が必要となるため、長期的な投資として費用を計算する必要があります。

以下では、こうした費用負担を軽減するために活用できる補助金制度について解説します。

AIの導入に活用できる補助金

AIは業務効率化に大きく寄与する一方、導入するための費用負担がネックになる企業も少なくありません。

そこで、ここからは初期費用やランニングコストを軽減できる補助金・助成金制度を紹介します。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などが自社の生産性向上や業務効率化のためにITツールを導入する際、その経費の一部を国が支援する制度です。

対象となるのは一定の要件を満たす中小企業・小規模事業者等で、通常枠やインボイス対応、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠など、目的に応じた申請類型が用意されています。

申請類型ごとに補助率や補助上限額、対象となる経費区分が細かく定められており、自社の投資規模や導入したいAI・クラウドサービスの内容にあわせて枠を選択することで、初期費用の負担を抑えながらデジタル化を進めやすくなります。

参照元:中小企業庁|IT導入補助金2025

ものづくり補助金

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業や小規模事業者等が革新的な商品・サービスの開発や生産プロセスの見直しに取り組む際、そのための設備投資等を支援する制度です。

対象となるのは、生産性向上や付加価値額の増大を目指す事業計画を策定し、働き方改革や賃上げ、インボイス制度など今後の制度変更に対応する中小企業・小規模事業者等です。公募要領で示された条件を満たすことが求められます。

補助上限額や補助率、補助対象となる経費の範囲は年度や類型ごとの公募要領で細かく定められているため、AIを含む設備・システム投資が要件に合致するかを確認しながら、自社の投資計画と補助枠とのバランスを検討することが大切です。

参照元:中小企業庁|ものづくり補助金総合サイト

中小企業新事業進出補助金

中小企業新事業進出補助金は、既存のビジネスとは異なる新市場や高付加価値分野への挑戦に取り組む中小企業等を対象に、設備投資などにかかる費用を支援し、企業規模の拡大や生産性向上を通じた賃上げの実現を目指す制度です。

対象となるのは「新事業進出指針」で定める新事業進出に該当する計画をもつ中小企業等です。補助事業終了後3~5年の計画期間において付加価値額の年平均4%以上の成長や、一定水準以上の賃上げ・事業場内最低賃金の引き上げといった要件を満たす事業計画を策定することが求められます。

補助金の上限額は従業員規模に応じて、従業員20人以下は2,500万円、21~50人は4,000万円、51~100人は5,500万円、101人超は7,000万円です。ただし、大幅な賃上げに取り組む事業者については、それぞれ3,000万円、5,000万円、7,000万円、9,000万円まで上乗せが可能です。補助下限は750万円、補助率は一律2分の1とされています。

参照元:経済産業省|中小企業新事業進出補助金

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、事業主が労働者に職務に関連する知識や技能を習得させる訓練を実施した際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が支給される制度であり、AI人材の育成にも活用できます。

また、デジタル分野の教育に適した「人への投資促進コース」では、高度デジタル人材の育成や自発的学習、定額制オンライン研修など幅広い訓練を支援し、企業内のスキル向上を後押しします。

訓練経費の助成額は、年間上限2,500万円(成長分野等人材訓練1,000万円・自発的職業能力開発訓練300万円など)と定められており、AIの設備導入費用ではなく社員教育の負担軽減に特化した助成金として利用できます。

参照元:厚生労働省|人材開発支援助成金

AI導入のプロセス

AIを業務に導入するためには、解決したい課題を明確にし、適切な手順で進めることが大切です。

ここからは導入プロセスについて解説します。

1. AIを活用する目的を決める

AIを導入する際は、自社が抱える課題を客観的に洗い出し、どの水準まで改善したいのかという目標を定めることが第一歩です。抽出した課題に対してAIがどの程度寄与できるのかを比較検討し、導入の必要性や期待できる効果を具体化します。

目標を設定する段階では、既存の業務を細かく棚卸しし、AIで対応すべき領域と人が担うべき業務を切り分ける作業が不可欠です。この工程により、業務フロー全体が可視化され、AI導入が適している部分や優先順位を見定めることが可能になります。

活用範囲を整理することで、システム要件や必要なデータ量、導入後の運用体制なども早期にイメージでき、無駄のない計画立案につながります。こうした事前設計が丁寧に行われていれば、導入後の定着や効果測定も円滑に進みます。

2.導入するAIシステム・サービスを検討する

AIを導入する目的や活用範囲が定まったら、導入するAIシステムを検討します。既存のAIソリューションを利用するのか、独自にシステムを構築するのかを比較し、それぞれの適合度や運用負担を慎重に見極めます。

市販のAIサービスを選ぶ場合は、操作性や回答の精度、情報セキュリティの高さ、コストといった要素を総合的に評価し、自社の業務フローとの相性を確認します。

独自開発を検討する場合は、社内の技術力や予算、外部委託の要否などを総合的に判断し、必要な体制を整えることが求められます。こうした比較検討により、現実的かつ実務に適した選択肢が導かれます。

おすすめのAIツールについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

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【最新】AIツールおすすめ8選|生成AIができること・使い分け術も紹介

3.特定の部門などで選定したAIを試用する

特定の部門で選定したAIを試用する段階では、限定的な範囲で実際の業務データを用いながら、導入効果や運用上の課題を把握することが大切です。試用を通じて得られたデータを整理し、AIが適切に処理できる形に整えることで、性能検証(パフォーマンステスト)を行います。

また、収集したデータをもとにAIへ学習を施し、一定期間の試験運用をすることで、精度向上の度合いや運用負荷を確認できます。既存システムとの連携状況についても、実務での活用に支障が出ないかどうかを見極めることが欠かせません。

4. 本格的にAIを導入・運用する

試用段階で得られた検証結果に問題がなければ、AIの活用範囲を広げながら本格導入へ移行します。実運用の開始後は業務データに基づく性能確認を継続し、必要に応じて設定や学習データを調整して運用精度を高めます。

稼働状況を定期的に点検し、業務フローの変化にあわせて改善を重ねることで、導入効果を安定的に維持できます。

AI導入を成功させるポイント

AI導入を円滑に進めるには、目的に応じた技術の選定だけでなく、社内体制の整備や運用後の継続的な改善が欠かせません。

ここからは、AI導入成功のポイントを解説します。

AI人材の確保や育成を行う

AIを継続的に活用するためには、技術の特徴やリスクを理解し、運用を担う人材を確保・育成する体制を整えることが欠かせません。運用担当者がAIの特性を踏まえた業務理解を深めることで、適切に改善点を見極め、導入効果を安定的に引き出せるようになります。

また、社内全体で安全に利用するためには、従業員向けにリテラシー教育を行い、セキュリティ事故や情報漏洩につながる不適切な操作を未然に防ぐ仕組みを構築する必要があります。

スモールスタートではじめ、PoCを検証する

まずAI導入は全社一斉展開ではなく、特定の部門や業務を対象にしたスモールスタートで実施し、限定された範囲で影響やリスクを見極めることが大切です。

次にPoC(Proof of Concept、概念実証)として、設定した課題がAIでどの程度解決できているか、目標達成が見込めるか、費用対効果が許容範囲かを検証します。PoCは期間や対象部門を絞り、短期間で集中的に実施するとともに、どの状態を成功と見なすかという評価基準を事前に定めておく必要があります。

社内での利用体制やガイドラインを整備する

AIを安全かつ効果的に活用するためには、社内での利用体制を整え、責任の所在を明確にすることが大切です。AIの導入を主導する担当者や部門を定め、利用ルールの整備や運用方針の判断を一元的に行える仕組みを構築します。

従業員が迷わずAIを活用できるよう、情報の取り扱い方や禁止事項をまとめたガイドラインを策定し、セキュリティ事故の防止と適切な利用促進を図ります。

AIの導入に向けて事前準備を徹底しよう

AIを業務に取り入れて成果につなげるためには、どの業務でどのように活用するのかといったルールづくりや手順の整理を事前に整備しておくことが不可欠です。導入前の準備が十分であれば、従業員が迷わず使い始めることができ、AI活用を組織に定着させやすくなります。

こうした、AIを使うための準備を進める際には、マニュアルや手順書の整備自体にもAIを活用するという方法があります。たとえば、業務内容の要点をまとめたり、手順案の草稿を作成したりといった作業はAIが得意とする領域であり、準備段階の負担を大きく減らすことができます。

このような、”マニュアル作成×AI”を実現するツールの一つが、Teachme Bizの「Teachme AI」です。手順書の草案生成や改善提案の整理などをサポートできるため、AI導入に向けた基盤づくりを効率的に進めたい場合に役立ちます。

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